温泉をいちばん愛しているのは?

2011.11.19

温泉の歴史を見ると、国や地域、温泉資源の豊かさに差はあっても、温泉の受け入れ方には普遍的なものがあることに気づく。一方、入浴法一つをとっても、それぞれの国での時代変遷による違いがあり、一様ではない。ヨーロッパの古代や中世で見られた利用法や入浴習慣と、時代がくだった日本でのそれが共通していたりもする。だから、歴史や空間を縦横に交差させ、人と温泉の結びつきを見たほうがよい。このようなことを私があえていうのは、昨今、日本人と温泉の関係は世界中どこにも見られないほど特殊なものであり、入浴の方法や意味合いが他の国の人々とは違うのだという言説を吹聴するむきが目につくからだ。

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ざっとあげても、「日本人ほど温泉好きな民族はほかにはいない」「温泉は日本人のDNAに刷りこまれている」「日本人は心の湯浴みをするために温泉に入る」「湯治のような習慣はほかの国にはない。湯治は日本人のアイデンティティに根ざしている」…あまりに情緒的な物言いだが、対象が温泉だからだれも目くじらをたてない。まして、世界の温泉事情など知る人はあまりいないから、そんなものかと思いがちだ。しかし、もうおわかりだろう。温泉を愛するのは歴史の上から見ても、何も日本人だけではない。今日でも、入浴習慣が異なっていると思われる国々から日本の温泉地を訪れ、温泉ファンになる人がたくさんいる。現に九州などの観光温泉地を支えているのは、アジアからの観光客だ。別府の町には、随所にハングルの案内板がある。「温泉熱」は大陸にも広がり、中国でも温泉開発が盛んになってきた。水着着用の混浴で、みな心地よさそうに温泉に浸っている。これも、「心の湯浴み」であるはずだ。現在では、どこの温泉に行っても、かえって日本人のほうがやたらとごしごしからだを洗うことに熱中している。





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